恋の神様はどこにいる?

食卓の上に用意されていたのは、ハムエッグとトースト。飲み物は、オレンジジュースやコーヒーが入ったペットボトルと牛乳が置いてあった。

「ホントに簡単」

「はあ!? おまえ、俺に喧嘩売ってるのか?」

マズイ!! つい、口が滑ってしまった。

でもよく見てみると、ハムエッグの横にはプチトマトが2個コロンと飾られているし、トーストは喫茶店のモーニングで出てくる食パンのようにふたつに切ってあった。

普段なら、きっとこんなことはしないはず。もしかしてこれって、私のためにちょっと気を使ってくれたとか?

そんな些細な事が嬉しくて。椅子に深く腰掛けると姿勢を正し、志貴に向き直った。

「志貴、ごめん。朝食用意してくれて、ありがとう」

「別にいいけど。ほら時間がない。早く食えよ」

「うん。いただきます」

普段、自分のためだけに朝食を作ることは殆ど無い。

ほぼ毎日、菓子パン。それを牛乳で流しこむように食べ、時間ギリギリで会社に向かう。

一人暮らしを始めた頃は、ドラマの中で見るようなカッコいい生活に憧れて、ちゃんと朝食を作っていたけれど。

そんな生活も二年も過ぎるとカッコよさより、一秒でも長く寝ていたいと楽な方を選んでしまうようになってしまった。



< 69 / 254 >

この作品をシェア

pagetop