恋の神様はどこにいる?

華咲神社から私の家までは、歩いて二十分くらい。車なら、途中信号に足止めを食らっても十分もあれば着いてしまう距離だ。

車が動き出ししばらくは、どちらも声を発することはなかったんだけど。一つ目の信号機が赤で車が停まると、志貴がおもむろに口を開いた。

「なあ、おまえの元カレって、会社の同僚だって言ってたよな?」

「うん。って、あれ? 私って、そんなことまで話した?」

「覚えてないのかよ。ほんと、小町って馬鹿だな」

また馬鹿って言った。志貴に馬鹿って言われるのは、何回言われても腹が立つ。

どうせ言い返したって、『馬鹿に馬鹿って言って何が悪い』とか言われちゃうのが関の山だから、あえては言い返さないけど。

でも元カレが、どこの誰かってことまで志貴に話していたとは……。

あの時の志貴は優しくて、聞き上手な彼についつい話さなくてもいいことまで話してしまっていたみたいだ。

「同僚って言ってもやってる仕事は違うし、会社内では顔を合わすこともそんなにないと思うから」

「ふ~ん、そっか」

「なんで?」

「いや。ちょっと聞いてみただけ」

それだけ言うと志貴は、また運転に集中して黙りこんでしまった。





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