恋の神様はどこにいる?
「会社を辞めるつもりもないし、志貴の召使いになるつもりもさらさらないので。今日は送っていただいて、ありがとうございました」
腹ただしい感情から乱暴にドアを開けると、車から降りる。そして振り返ると、志貴を睨みつけた。
「そんな怖い顔するなよ。俺はおまえが会社を辞めて、俺のところに来るって確信してんだけどな」
「100%あり得ない。それと、一ヶ月で志貴を落としてみせるって言ったのも撤回する」
「ふ~ん、そうなんだ。小町がそう言うんだったら、それでいいんじゃない。でもおまえ、変わりたいんじゃないの?」
「それは……」
そうだけど。でもそのことと志貴は関係ない。志貴がいなくたって、私は変わってみせるんだから。
「まあいいや。じゃあ、またいつでも来いよ。待ってる」
「待ってなくていいから。さようなら」
バンッと激しい音を立ててドアを閉めると、志貴の顔を見ることもなくアパートに向かって歩き出す。
「仕事、頑張れよ~」
志貴に言われなくても、頑張るに決まってるでしょ!!
背中越しに志貴の軽い声が聞えると、私はアパートの階段を急いで駆け上がった。