恋の神様はどこにいる?

「笹原さんが、言いふらしてるのよ。真野小町と付き合って、ひどい目にあったってね」

「ええ!? 何ですか、それ? 私何もしてません。まあ、何回かエッチは拒みましたけど、ひどい目なんて……」

「真野さん、エッチ拒んだんだ。きっとそれが、笹原さんも自尊心を傷つけたのね。彼、プライドだけは異常に高い人だから」

自尊心かぁ。そんなつもりはなかったんだけど、結果そういうことに繋がってしまったのかもしれない。

でも私だって、今度こそは大丈夫。愛されてるってわかれば、エッチという大きな壁も乗り越えられるって思っていたのに、今回もやっぱり無理で。

「笹原さんってルックスいいから若い女の子に人気あるし、仕事もそれなりにできるから上司の受けもいい。だからみんな、彼の言うことを信用しちゃってるみたいで」

そうか。だからさっき会社に入った時、痛いほどの視線を感じたんだ。

でもまだ信じられない。笹原さんが、そんな幼稚なことをする人だったなんて。

付き合っているときは、とても紳士的で穏やかで。優しい笑顔でいつも私を和ませてくれたあの笹原さんが、そんなことを言いふらしてるなんて。

「業務の仲間はみんな、真野さんのことを信じてる。でも……」

「でも?」

「笹原さん、どうも上の方の人たちを上手く丸め込んだみたいで、朝一であなたに移動命令が出てるのよ」

「移動命令!? どこにですか?」

「ほら、隣町の山の中に資材置き場があるでしょ。あそこのプレハブ事務所」

「ええぇぇぇーーーっ!!」

 *  *  *



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