恋の神様はどこにいる?

「で、会社辞めてきちゃったわけだ」

「だって、笹原さんにも会社にも頭にきちゃって。その後主任に『資材置き場に行くぐらいなら会社辞めます』って言ったら、主任なんて言ったと思う?」

「さあ?」

「『はい、どうぞ。今までお疲れ様でした』だって。その言葉聞いた時、私って何のためにこの会社にいたんだろうって悲しくなっちゃって。でもその場で泣くなんて悔しいじゃない。だから『二年間お世話になりました』って笑って言い返してやって、すぐに荷物まとめて会社出て来ちゃった」

「それで、今泣いてるわけね。よしよし、よく頑張ったね」

テーブルの向こう側から、香澄が私の頭を撫でてくれて。激しく高ぶっていた感情は治まり始め、少しずつ冷静さを取り戻す。

そうすると次にひょっこり顔を出すのは、『これからどうしたらいいんだろう?』という不安。

多少の蓄えはあるものの、ひとり暮らしの身としては、すぐにでも次の仕事を見つけないといけないわけで。

「ねえ香澄。仕事は簡単だけど給料はいい会社、どこか知らない?」

「そんな会社知ってたら、私が入るっていうの。でもまあ私は今の会社かなり気に入ってるし、必要とされてるから辞めるつもりもないけどね」

「それって、何気に言ってることヒドくない?」

「そう?」

香澄って、優しいのか冷たいのかよくわからない。でも私がピンチの時には必ず来てくれて、こうやって話を聞いてくれる。かけがえのない親友だ。

だから私に起こった四年前の出来事も当然知っていて、それが原因でエッチができなくなってしまったことも彼女だけには話してあった。



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