恋の神様はどこにいる?
☆現在・過去・未来
抜き足、差し足、忍び足。
私は今、まるでこそ泥のように境内の縁を少しずつ進んでいる。
誰かいないか確認しながら境内の縁をコソコソ歩き、ひときわ目立つ大木を見つけるとそこに駆け込み身を隠した。
「何やってるんだろう、私……」
これじゃあ不審者に間違われても、言い訳できないよね。
木の根元にしゃがみ込みため息をつくと、昨晩香澄に言われた言葉を思い出す。
人を好きになるのに時間なんて関係ない───
何年も付き合って結婚する人もいれば、出会ってすぐに結婚する人だっている。
誰かのことを好きになるスピードなんて人それぞれ。何が正解で何が間違ってるなんてあるわけなくて。
そんなことはわかっていても今回は、会社の同僚でもなく、学生時代の友人でもなく、誰かに紹介されたわけでもない、三日前に突然声を掛けられた見も知らぬ男性で。
優しくて良い人だと思って(いや、確かに顔も好みでココロとカラダが束縛された感はあったけれど)自分の身の上話してしまったからか、何かいつもとは事情が違っていて。
今自分の中にある気持ちがどういったたぐいのものなのか、わからなくなってしまっていた。
「野々宮志貴……かぁ」
「志貴がどうしたって?」
「…………!?」
突然大木の裏から現れた千里さんに驚き、ギャーッと大声を上げそうになって寸前でなんとか止める。
それでも胸のバクバクはしばらく収まらなくて、胸に両手を当てて呼吸を整えていた。