恋の神様はどこにいる?
「まあとにかく、うちの現状として新しい巫女を募集しているのは本当。和歌ちゃんひとりじゃ大変だからね」
「はい」
「小町ちゃんさえ本気でヤル気があるのなら、こっちとしてはありがたい話なんだけど。もう一度、よく考えてみて。志貴と一緒に」
志貴と一緒に───
その言葉を、ひとり頭の中で復唱する。
志貴と一緒に考えたって、もう答えは出ているようなもの。
だって志貴が私に『巫女として働け』って言ったんだから。まあ『俺の下婢として使ってやる』なんて、余計なことも言ってたけれど。
志貴、仕事が終わったら私のアパートに来るって言ってたよね?
香澄に言われてノコノコと神社に来てしまったけれど、まだ私の中で“巫女になる”と決まったわけじゃない。
早く次の仕事を見つけたい私としては、巫女もひとつの選択肢だと思っているだけ。
でも仕事を辞めたなんて言ったら志貴は、『絶対に私を巫女にする』って言いかねないし。
私、志貴とふたりっきりで、冷静に話ができるんだろうか?
「小町ちゃん、また顔が」
「あっ、すみません」
「別に謝らなくてもいいよ。楽しい時間が過ごせたし」
そう言うと千里さんは立ち上がり、ドアに向かって歩き出す。そしてドアノブに手を掛けると、こっちを振り返った。
「巫女の仕事は大変だって話ばかりしたけど、メリットも多い魅力的な仕事でもあると思うんだ。良い返事を期待してる。小町ちゃんが来てくれるのを待ってるから」
そう言う千里さんの目は、本気を語っていて。
「は、はい……」
それだけしか、答えることができなかった。