しわくちゃになったら、会いに行きます。2

初夏



 少しずつ蝉が鳴き始めている。


 暑さには、もともと強い方だった。


 けれど、この体になってから、それはとても幸せな感覚なのだと思う。


 暑い、寒い、痛い。


 そういう、いわゆる五感が抜け落ちた身体は、異様なまでの不快感をもたらす。




 「彰太くん?」




 彼女は、そんな俺を気味悪がったり、嫌悪しない。


 彼女をどうこう言うわけじゃない。


 けれど、彼女は異質なんだと思う。


 それに甘えて、こうして空っぽの体に浮遊することを甘えている俺も、きっと異質なんだろう。


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