扉の向こうのパラダイス
「ば、ばか、声がでかいよ。インポじゃねーよ。ちゃんと勃つし」

俺は焦って、誰かに聞かれちゃいないか、薄暗い店内を見回す。


「だって奥さんとできないんでしょう?いつからなの?」

ビールが苦手なアケミは、ウーロン杯から早くも麦焼酎のロックに切り替えていた。
ほんのりと目が充血している。その表情がやけにセクシーだ。

変わらねーな、アケミは。相変わらず可愛いや。
40過ぎてるのに皺は少ないし、どうしてこんなに若々しいんだ?


アケミとは大学の時からの付き合いだから、妻よりもはるかに長い。
付き合いは長いが友達以上の感情を持ったことはなく、ましてや男女の関係になったこともない。

互いに結婚したが、アケミの方は去年5年の結婚生活にピリオドを打ち、本人いわく「今、青春を謳歌している」のだそうだ。


「シュウジとあたしの間柄じゃない。包み隠さず話しなさいよ。いつから奥さんとセックスできないの?」

「もう10年くらい前からかな」
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