扉の向こうのパラダイス
梅雨の季節。
じめじめと蒸し暑い。
小雨の降る中、待ち合わせたショッピングセンターへと急いだ。

出入り口に到着するが、金曜の夜だけあって、かなりの人で賑わっている。
20歳の学生、名前はカズオ、それとメアド。
相手の情報はそれしか分からない。

到着したことを知らせようとケータイを取り出したところで、タイミングよく着信音が鳴った。

「カズオです。今着きました。グレーのパーカーを着て、大きな黒いバッグを持っています」

ケータイを握り締めたまま見回すと、同じように手元に視線を落とす、グレーのパーカー姿が目に留まった。

彼か?

ベージュのジーンズ姿で、大きな黒いバッグも持っている。

顔を上げた男性と目が合った。

「どうも」

「どうも」

目が大きく、細身でひょろっと背の高いカズオ君の第一印象は、アンガの山根だった。
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