扉の向こうのパラダイス
「じゃあ、少し歩きましょうか。えーと、お酒は飲めるの?」

聞きながら軽く緊張する。

カズオ君の外見は、どこにでもいるような学生だ。

たしかに、ナヨッとしてはいるが、とてもゲイには思えなかった。

40過ぎた親父が、20歳の青年を連れて歩いている。
不思議な光景に見えやしないか。
それとも考えすぎだろうか。

「お酒はあんまり飲めなんです。一杯くらいで真っ赤になっちゃって」

「そっか。じゃあ、ファミレスかなんかにする?」

「いや、どこでもいいですよ、ユージさんにお任せします」

ユージ?誰だっけユージって。
あ、俺のハンドルだったんだ。


飲み屋ばかりが入った雑居ビルを選んだ。

2階の居酒屋チェーン店は満席だたので、5階のBARに入る。

入った瞬間、場所を間違えたなと思った。
にぎやかだ。うるさすぎる。
ここでは込み入った話ができないような気がした。
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