扉の向こうのパラダイス
「サクラってことはないでしょう。たぶんほんとに出会えたりするんじゃないですか。
それでユージさんも書き込んでみようと思った?」

「いや、その逆。あの掲示板読んでかなり引いたよ。怖かったしね。
それですぐにサイトを閉じようと思ったら、もう一つ掲示板があってそっちは『まじめ系』って書いてあるじゃない。なんだろうって思って・・・」

そこで店員がパスタを運んできたので、声をひそめた。

夢中になってここまで話してきたが、時折カウンターのカップルが後ろを振り返るところを見ると、話し声が漏れているかもしれなかった。
聞かれるのは恥ずかしい内容だ。

「まじめ系の掲示板・・・たしかにありますね」

「うん、それでそっちを覗いたら、さっきの『即ヤリタイ』って方とは違って、みんな真面目に『パートナー募集』って書き込んでた。10代から上は50代くらいまで実に様々だったよ。こんなにゲイ人口って多いんだって驚いたもの」

「ユージさんの書き込みは衝撃的でしたよ。『自分は女性を抱けない。ゲイなのかも?』でしたっけ?」

「んー、まぁ、そんなニュアンス」

「ということはまだ男性と経験はないんですよね?」

「け、経験って、、セックスのこと?」

声をひそめて訊ねると、カズオ君は首を縦に振った。
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