扉の向こうのパラダイス
「飲むかい?」

「いや、僕はいいです」

「そう。じゃ一人でいただくよ」

キリンの瓶ビールをグラスに注ぐ。

2人はもう裸じゃない。

バスローブに着替え、安っぽい応接セットで向き合っている。

一息にグラスのビールを飲み干す。

口の中にはまだ、カズオ君の精液の苦々しさが残っている。

「俺、ちょっと誤解してたみたいだ。
ゲイの人のセックスって、掘ったり掘られたりするものだと思ってたから。
あ、ごめん、気を悪くしたら謝るよ」

「ううん、ぜんぜん。
掘るって、お尻にってことですよね?」

「うん、そう。
みんなそうしてると思ってた」

「たしかに、みんな、じゃないですね。
僕の場合はそういうことよりも、気持ち的なことの方が大きいから、手を繋いだり、抱きしめられたりする方が幸せを感じます。
第一、僕のをユージさんのお尻に入れたら、たぶん壊れちゃいますよ」

「は、はは、ははは」

想像して、思わず乾いた笑いになる。

たしかに壊れてしまう。
あんな大きいペニスが肛門のちっちゃい穴に入るはずがない。
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