扉の向こうのパラダイス
「じゃあ、カズオ君は、まったくそういう経験ってないの?」

興味本位で訊ねてみる。

首を傾げ、少しはにかみながら、カズオ君は口を開いた。

「いや、何度もありますよ」

「そ、それって、その、入れる方なの?入れられる方なの?」

「ふふふ、入れられる方。でもね、条件付きです。
その相手が好きで、彼がどうしても入れたいってせがむ時に限ります。
やっぱり嫌ですよ。あそこは出すところで、入れる場所じゃないですから。
痛いし、僕はあんまり好きじゃない」

「それよりも、カズオ君は、ベタベタしてるほうがいい?」

「そうです。セックスよりもイチャイチャしてるのが好き。
それってゲイに限ったことじゃないでしょう?
男女の恋愛だって、セックスは最初のうちだけで、肝心なのは相性じゃないですか?」

「そうだな。セックスなんて最初のうちだけだよな」

すでに冷え切った関係の妻のことを思い出していた。
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