扉の向こうのパラダイス
終電間際とあってか、駅は家路に帰る人でいっぱいだった。

「じゃあね、学校頑張るんだぞ」

「はい。ユージさんもお仕事頑張ってくださいね」

改札口で握手をして別れた。

途中で一度振り返ると、カズオ君はまだ手を振っていたので、お返しに小さく振り返した。

しばらく歩いてからもう一度振り返ったけど、そこにはもう誰もいなかった。

ポケットの中で振動するケータイ。

今別れたカズオ君からだった。

「今日はありがとうございました。楽しかったです。
また会えますよね。今度は僕がご馳走しますから」

どう返事を書こうか迷っている間に、電車がホームに滑り込んできた。

人垣に押されながら、電車内の中ほどに追いやられてしまったので、仕方なくケータイを鞄の中に仕舞った。

返事を書くのはやめよう。

カズオ君と、もう2度と会うことはないだろう。

直感的にそう悟った。

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