扉の向こうのパラダイス
10時過ぎに店を出た。

「ユージはまだ時間大丈夫?
美味しいギネスビールを飲ませてくれるバーがあるんだ」

案内された場所は、高級感漂うホテルのラウンジだった。

薄暗い店内はピアノの音が低く流れている。

チノパンにポロシャツの俺は入るのに気が引けたが、サトルさんはお構いなしでどんどん歩いていく。
その背中に続いた。

テーブルの中央には、小さなろうそくの炎が小さく揺れている。

ギネスビールが2つ運ばれてきた。

大き目のグラスに、見るからにクリーミィな泡が溢れそうになっている。

「へ~、この黒ビールがギネスか。
どこのビールなんですか?アメリカ?」

「ううん、アイルランド。
ちょっと高いんだけど僕はこれが好きなんだ。
普通の缶ビールだと350㎜だけど、これは一缶400㎜でね、これと同じでちょうど一杯になる専用のグラスがあるんだよ」

乾杯をして口を付けると、まずその泡に驚かされた。
本当のクリームのように滑らかで、舌触りが良い。

「このギネスの缶って不思議でね、中に特殊なボールが入っていて、どんな注ぎ方をしても、こんな風に綺麗な泡が立つんだ」

味も、黒ビール独特の臭みがなく美味しくて、ほとんど一気に飲み干してしまった。
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