扉の向こうのパラダイス
サトル②深まり
再びメールでのやり取りが始まった。

毎日のやり取りの中で、どうして語学が堪能なのかが分かった。
シンガポールに長期で出張していて、その間に英語をマスターしたのだという。

話の流れから、当時付き合っていた「彼」のことも知った。

「僕の会社は貿易関係でね、アジア各国はしょっちゅう出張で行かされるんだけど、シンガポールは一番長かったな。30代後半はずっと向こうだった。

英語は多少の自信があったけど、シンガポールは独特でね、全然通じないんだ。日本だって地方に行くと方言が強いでしょう?あれと同じ。語尾に「ラー」とか付けるのも特徴でね、最初は全然言葉が通じなかったよ。
シンガポールの英語をマスターしたから、僕のは「イングリッシュ」じゃなくって「シングリッシュ」なんだ。

あの頃付き合っている人がいたんだ。

年下のシンガポール人だった。
< 50 / 58 >

この作品をシェア

pagetop