扉の向こうのパラダイス
数十通のメールのやり取りが続き、お互いの壁はすっかり取り除かれていたが、不思議なことに1度会ったっきり、それ以降サトルさんは俺を誘ってこなかった。

ギネスビールのグラスを傾けたあの夜が懐かしい。

すぐに次の再会があると思っていたが、まるで誘いがない。

振り返れば、最初にゲイサイトの掲示板に悩みを綴った時、相当な数のメールが届いた。

どれもが「会いたい」という内容ばかり。
「会いたい」という文字が「やりたい」に見えるほど、どの人もがつがつと本性むき出しだった。

ゲイの方はみんな同じだと思っていたので、サトルさんの「静けさ」が意外だった。

毎日毎日、日常の出来事を報告しあうだけのメールばかり。

それはそれで楽しかったけれど、もう一歩前進したかった。


「今週、一緒に飲みませんか?」


また俺の方から誘ってしまった。
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