扉の向こうのパラダイス
「アケミはこういう経験ってないか?
男が勃たなくて、できなかった時って」

「うーん、あったかなぁ・・・無いかもしれない。
2人とも酔っ払っちゃって、何もしないで寝ちゃったことなら何度もあるけどね」

やっぱり無いのか。
できないのは俺だけなのか。

妻は何も言わない。
もともと淡白なので、別にセックスがなくてもいいようだった。

そのセックスも、最中はほとんどマグロだし、声も出さないし、終わればさっさと寝る。
もうちょっと色気でもあれば興奮するのかもしれないが。


「ゴムがいけないのかしらね」

アケミは首をひねり、考え込んでいる。

テーブルの上の刺身の盛り合わせは、俺もアケミも箸を伸ばすことなく、乾燥してしまっていた。

「ゴムがどうこうってわけでもないんだ。
生で入れようとしても同じ。
挿入の瞬間になると萎えちまう」

「シュ~って?」

「そう、ヒュルヒュル~って、おい!
俺、真剣に悩んでるんだけどな」

「ごめんね」と言いながら、アケミは可愛くウィンクをした。
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