扉の向こうのパラダイス
「なんとか勃たせて、無理やり挿入しても、あっという間に出ちゃったりで、毎回毎回、自己嫌悪。
俺さ、病院へ行こうかと思ってる。
一応勃起はするからインポではないと思うんだよね。
もしかしたらEDなのかなって」

「ED?
勃起不全なんとかって、例のあれ?」

「うん、そう」

俺の落ち込み方を見て、アケミもことの深刻さに気付いたようだった。
顔からは笑顔が消えている。

これまでもそうだ。

親父が死んだ時や、友達にお金を騙し取られた時、アケミはいつも親身になってくれた。

男友達もいるにはが、実際に何か問題が起きた時、彼らに話すよりも、まずはアケミに相談をしてきた。


『男女間の友情は存在しない』という通説があるけれど、アケミとは例外だ。
一生こんな風に、何かあっては酒を飲んで、一緒に年老いていくのだろう。


はっ?


今なんて言った?


「だから、してみようって言ったの」


「してみよう・・・ってなにを?」


「もう、はっきりしない男ね。
あたしとセックスをしてみようって言ったの。
できるかどうか試してみようよ、シュウジ」
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