愛情の鎖

「じゃあ、これから改めてよろしくね」

「はいはい」


それからニコニコと気分よくお皿を洗うのを再開した私。……すると、ふと真っ直ぐな視線を感じてふいに顔を上げた。


「……ん?なに?」

「…いや……」


思わずドキリとした。

だってコウさんがとても柔らかな眼差しでふッと笑って私を見るんだもん。

その姿が普段想像できないぐらい穏やかで、どうしてか調子が狂う。


「まだ何か食べたいの?」

「ちげーよ」

「もしかして気分悪くなった?」


そういえばさっきからずっと話してるもんね。

さすがのコウさんも体が辛くなってきたのかもしれない。


「ごめん、気が利かなくて。もう休んだほうがいいよね」


そんな雰囲気に思わずはてなマーク。空気を変えるように水を止めてコウさんの目の前まで行くと、もう一度体温計を差し出した。


「もっかい計ってみる?」

「あんま変わんねーと思うけど」

「念のため」


そう言って計り終わった体温を見れば本当だ。さっきとほぼ変わらない同じ数字が…


「だから言っただろ」

「だったらもう寝なよ。体つらくないの?」

「別に、つーか俺をあんま甘くみんなよ。これぐらいで倒れてたらこの先何もできねー」

「ふ〜ん」


何だかよく分からないが、男の強がり?
みたいなもんだろうか?

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