愛情の鎖

「つーことで、最後まで看病よろしく」

「コウさんって、本当性格悪いよね?」

「あ?」

「もう……!分かったよ。分かった分かりましたよ。でも、その代わり何もしないでよ」

「それはこっちの台詞だ」


カッチーン!

思わず眉間に皺がよる。

売り言葉に買い言葉。本当口が悪い。

そんなムカつくやり取りをしていたら、何だかもう急にどうでもよくなってきた。

一人で怒ってる私がバカみたい。


「誰がコウさんなんか、例えお金を貰ったとしてもコウさんなんか襲いませんよーだ!」

「ふっ……」

「もう寝る。おやすみ!」


やけになってコウさんから勢いよく背を向けると、もう変な緊張はすっかり吹き飛んでいた。

その代わり、やけに重たい眠気が私を迎えにきた。

今日1日バタバタだったせいか、すぐに緩やかな夢の世界へと導かれてしまう。


「ぐっすり寝ろよ」


ぶっきらぼうなのに優しい声。

意識が落ちる寸前、何故か背後から回ってきた柔らかな腕。

そのまま優しく抱きすくめられる感覚がすると、以外にも大きなカイロに包まれたようだった。

それが妙にしっくりときて、心地よくて。

久しぶりに何も怯えることなく、深い眠りに着けた私。

不謹慎だけど、このまま穏やかな世界にどっぷり浸かりたい。

そう思った私は、まだまだ強い人間にはなれそうもないと思った。

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