愛情の鎖
「もうすぐ梨央の誕生日だな。何か欲しいものはないのか?」
出勤前。夕方過ぎて再び黒のスーツに着替えた宗一郎さんが食器を洗う私の手を止めた。
お風呂に入り、私の作った夕飯を食べた宗一郎さんはとても満足そうな顔してそう聞いてきた。
「う~ん。特にないかな」
「またそれか……。じゃあ、服とかアクセサリーはどうだ?」
「それはこの前買ってもらったじゃない」
「じゃあ、バッグとか靴は?」
「それも買ってもらったよ」
「そうか……それなら……」
「宗一郎さん」
私は言葉を遮り掴まれた彼の手をそっと握る。
こんな会話もいつもの繰り返し。
「私、宗一郎さんと一緒にご飯を食べに行きたい。ラーメン食べにいこ?それじゃダメ……かな?」
物なんて使いきれないほど溢れてる。
服にバックはもちろんのこと、アクセサリーや靴香水やその他もろもろこの3年の間に嫌というほど買い与えられてきた。
何かと理由をつけては私に物を贈り、甘やかしてくる宗一郎さん。
その度に私の心は何も感じなくなり、彼の欲望という圧力に支配されていった。