愛情の鎖
ヤバイ。
宗一郎さんからのメールがある!
それはほんの5分ほど前に送られてきたもので、『あと1時間ぐらいで帰る』そんな内容のものだった。
まずい…
「あ、あのっ、私帰ります!」
「えっ、梨央ちゃん?」
突然慌て出した私に、当然だけど唯さんがビックリしたような声を上げる。そしてコウさんも…
「……梨央?」
「すみません!今日は本当にありがとうございました!また、改めて今日のお詫びはしますのでっ、ご、ごめんなさ…」
「もしかして…、今のメールって旦那さん?」
「あ、はい。もうすぐ帰るってっ、今から食事の用意をしなきゃいけないので、本当すみません!」
バッグとコートを持ち、ガバッと深めに頭をさげる。
この時、一瞬で険しい顔になったコウさんにも気付かないほど私は焦っていた。
とりあえず、今は宗一郎さんが帰って来るまでに帰らなきゃいけない。
こんな事がバレたら、コウさん達にも迷惑をかけちゃうかもしれない。
「梨央」
だけど、靴を履き玄関の扉を開けようとした時、突然大きな手に腕を捕まれた。そのまま強めに引かれると、コウさんの方へと自動的に振り返る格好になる。
「大丈夫か?」
「えっ…」
「何かあったらいつでも俺に連絡しろ」
いつになく真剣な瞳を向けられて、思わずドキリと停止する。
「…え、と……」
「いいから俺に電話しろ、絶対だ。いいな」
その表情があまりに真っ直ぐだったから、困惑しながらも頷くしかできなかった、けど、
「明日、屋上で待ってる」
手が離れ、背後から再び真剣な声がかけられた時、私はいいようのない切なさに襲われた。
がチャリ、玄関の扉が閉まると同時に芽生えたコウさんへの確実な思い。