愛情の鎖
その日、宗一郎さんは結局1時間経っても帰って来なかった。
帰ってきたのはそれから数時間経ち、私がベッドの中で熟睡し始めた頃だった。
相変わらず彼は時間に正確じゃない。
この時間に帰る、と言いながら実際その通りに帰って来たのはこの3年間でほんの片手ぐらいの数だ。
ふぅ……。
でも昨日は助かった。
こんな気持ちのまま、宗一郎さんと顔を合わすのは嫌だった。今は誰とも話したくなかったのだ。
幸い生理中のため、宗一郎さんに抱かれる心配もない。
そしていいのか悪いのか、宗一郎さんは今日の夕方、やっといつものように仕事に行った。
珍しく、いつもより早めに家を出た宗一郎さんに安堵の表情が押し寄せたのはいいのだけど……
「はぁ……」
深いため息がでる。
都合がいいことに、私は自由になってしまった。これではいつでも屋上に行けてしまう。
正直迷っていた。コウさんへの気持ちに気付いた今、前みたいに気軽に屋上に顔を出すことなんてできない。
昨日の今日だということもあり、気持ちがモヤモヤと沈み、困惑するばかりだった。