愛情の鎖
「お姉さん今から来られますか?かなり熱が高いので、できたらすぐに菜々ちゃんを病院に連れていった方がいいと思うんですが…」
「分かりました。すぐに行きます!」
時間を見ればまだ朝の10時半だった。翔太に頼めばギリギリで午前中の診療に間に合う時間帯。
幸い今日も宗一郎さんからの連絡はないし、何より菜々のことが心配だった。
「すぐ行きますので、もう少し待っててください!」
慌ててバッグを持った私は急いで翔太に電話した。
1コール2コール、3コール……
……なのに、翔太にかけても繋がらない。こんな時に限って何度電話しても出ないのだ。
もうっ、何やってるのよ!
いつもはうんざりするほどすぐ出るくせに、大事な時に限って使えない。
私はイライラと玄関を見た。
このままじゃいつ迎えに行けるか分からない。
その間母にも連絡をとったものの、通話が繋がることはなく、余計ソワソワとしてしまう。
もう、知らない!
電話に出ない翔太が悪いんだからね。
私はそう言い聞かせてフロントの遠藤さんに電話した。
「タクシーをすぐに呼んでください!」
そう告げて、私はがチャリと電話を切った。