愛情の鎖
それから10分ぐらいしてすぐにタクシーが来た。
エントラスに降り、フロントの遠藤さんに事情を話すと、少し怪訝な顔をされたものの、すぐに了解してくれた。
「すみません、すぐ戻ります。もし、いつも一緒にいる金髪の彼に聞かれたらそう伝えてください」
とりあえずそう告げてタクシーに乗り込んだ。
何だか嫌な予感がする。
昔から私の予感は不思議と当る。
それは当ってほしくない事にかぎってだ。
「お願い、何もありませんように…」
そう願いながら菜々を迎えに行くと、少しぐったりとした妹の姿が目に飛び込んできた。
私を見つけ、先生に抱っこされた菜々が弱々しく私に向かって手を伸ばす。
「…お姉ちゃ……」
「もう大丈夫だからね菜々、安心してね」
「……うん」
「今からお姉ちゃんと病院に行こう」
無言で頷き私の首に腕を回す菜々。
やっと安心できたのかもしれない。
私の胸に顔を埋める姿がどことなくホッとしているように見えた。