愛情の鎖
私は見送ってくれた先生に深く挨拶をすると、菜々と一緒に再びタクシーに乗り込んだ。
菜々を膝の上に乗せ、ぎゅっと抱きしめながら小さな背中を優しく撫でる。
そこからでも伝わってくる菜々の熱すぎる体温。
「ねぇ……菜々、ママ今日どこかに出かけるって言ってた?」
私の問いかけに菜々が小さく首を傾ける。
もしかしたらバイト、かな?
今日も頼まれてバイトに行ってるのかもしれない。父は先週から仕事で出張に行ってるし、ここはやっぱり私がしっかりしないと!
そう意気込んだ私は病院に行く前に先に自宅へと向かった。
菜々の保険証を取りに行くため、タクシーの運転手さんに菜々をお願いして一人で家の中に向かうと、そこはやけに静まりかえっていた。
やっぱり誰も居ないのかもしれない。
そう思いつつ、ふと足元に目をやれば玄関に母のパンプスかあった。そして男物の革靴も……
「……えっ?」
思わず視点が止まる。
それはよく知ってるブランドで、どこか見覚えのある上質なものだったから。