愛情の鎖


そして、これが地獄へのカウントダウンの始まりだった。


きっとこの時、私は何かを予感してたのかもしれない。

この先に待ってる残酷なまでの現実を。


どうして気付けなかったんだろう…

自宅から少し離れて停車された黒色の高級セダン。

それは間違いなくあの人の所有物で、玄関に乱雑に置かれた靴はいつも宗一郎さんが履いているものだ。


バクバクと、嫌な動悸が押し寄せてくる。


リビングには誰も…いない。

一歩一歩階段を上がり、吸い寄せられるように2階に行くと微かに誰かの話し声が聞こえてきた。


まさか、まさか……ね?

そこは父と母の寝室で、目の前のドアが2センチほど開いていた。




「…留理子……」

「…やっ……」



思わず耳を疑った。

話し声なんて、そんな可愛いものじゃない。

むしろゾッとするような甘い声。

もちろんそれは母の声で、扉の隙間から耳を塞ぎたくなるような卑猥な光景が瞳に突き刺さる。

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