愛情の鎖
「大丈夫、ただの風邪だよ」
白を基調とした診察室、方針状態のまま菜々を病院に連れて行くと、柔らかに言った先生が私を見て微笑んだ。
「とりあえず5日分薬だしとくね。もし熱が下がらないよいならまた来てください」
「…はい……」
私は俯きながら返事した。
半分虚ろな菜々を抱き上げると、パソコンを打ち終えた先生がなぜか少し目を細めて私を引き留めた。
「……大丈夫?」
「えっ……」
「何だか顔色が悪いようだけど、何かあったの?」
懐かしいその口調、そして柔らかな瞳。彼は父の古くからの友人だった。
そして私が小さな頃からお世話になってる医師、新庄先生だ。
久しぶりに見たせいか、どことなく皺が増え、髪の毛が白髪混じりになった気がする。
「さっきから泣きそうな顔をしてるよ」
「えっ……」
「それに元気がない。もし私でよかったら相談ぐらいのりますよ」
口を緩めた先生に私は小さく顔を横に振った。
「大丈夫です…」と力なく微笑んでみせる。