愛情の鎖
一瞬コウさんの顔がよぎったが、菜々がいる手前それも難しいと思った。
目が覚めた時、母がいないと泣いてしまう。母が大好きな菜々。やっぱり逃げる道なんて私にはないのかもしれない。
「あの、お客さん行き先はどうします?」
運転手に即されて、私は重い気持ちでゆっくりと言った。
「…とりあえずさっきの自宅までお願いします……」
菜々をこのままにはしておけない。
ゆっくりベッドの中で休ませてあげないと、治るものも治らない。
それに私には真実を知る権利がある。知らなきゃいけないんだと思う。
それが例え修羅場になろうが、親子の縁を切ることになったとしても、目の前の現実に目を反らしちゃいけないのが今の現実だ。