愛情の鎖

息が苦しかった。

母の悲しげな視線が背中に強く突き刺さったから。


だったら……なぜ?

そんな表情をするぐらいならなぜあの人と寝たの?私達を裏切ったの?

胸の中で何度も問い正したけれど、今の私には振り向く勇気はなかった。

聞きたいことは沢山ある。叫びたい感情も。

けれど、どれもかれもがぐちゃぐちゃに混乱していて何をどう切り出さしたらいいのさえよく分からない。



「おやすみ、菜々……」


妹をベッドに寝かせると、私は深い息を吐いた。そして意を決して再び一階に降りる。

リビングの扉を開けると、母がうなだれるようにしてソファーに座り込んでいる。

私はおも苦しい緊張を解すようにそんな母の後ろを通り過ぎキッチンに向かった。
まずはカラカラに渇いた喉を何かで潤したかった。

そうして、コップ一杯の麦茶を口の中に流し込むと、すぐに背後から弱々しい気配を感じた。

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