愛情の鎖
昔から歌うのが好きだった。
物心ついた時から私が歌えば両親やお婆ちゃん。周りの皆がとても嬉しそうに笑ってくれた。
それが嬉しくて、皆の喜ぶ顔が見たかった私は暇さえあればきゃっきゃはしゃぎながら声を鳴らしてした。
それは次第に私の自信になっていき、いつしか大勢の前で歌いたい。そんな大それた夢にまで成長していた。
だけど…、それは今となっては儚い夢の話。
私が此処にいる限り叶わない夢だと、何も期待できなくなった。
だからこそ、こんな風に私の歌を聞いてくれることが素直に嬉しかった。
ぶっきら棒でなに考えてるのか分からないコウさんだけど、なぜだか妙な安心感を与える不思議な存在なのは確かだった。