愛情の鎖
「…っ……」
その時、私の中で何かが崩壊する音が聞こえた。
ガラガラと足元が崩れ、すぅーっと感情が消えていく。
「梨央、自由になりたかったらあの男を殺せ。それが無理ならいっそ、この俺を殺して自由を勝ち取ることだな」
目の前が真っ暗になった。
いつの間にか体は床に倒され、私の上にのし掛かった宗一郎さんに首を締められながら拘束されていた。
唇に彼の歪んだ欲望の吐息が落とされる。
そのまま荒々しく唇を塞がれると、私は完全になすがまま。
もう抵抗する気力も失せ、強張っていた全身の筋肉が嘘のようにストンと落ちた。
宗一郎さんの舌が私の鎖骨にいやらしく這ったような気がしたけど、もう何も感じなかった。
何故か何の音も聞こえない。
真っ暗な暗闇の中で微かに感じる体の不快感と、首を閉められているという重圧感。
次第にそれすらも感じなくなると、私はゆっくりと意識を手放した。
最後にコウさんの顔が脳裏に浮かんだような気がしたけど、もう遅かった。
ふいに甦ったコウさんへの淡い恋心を失うように、私は深い闇の底へと落ちていった。