愛情の鎖
そう思ったら最後、俺の気持ちは真っ直ぐ前に進んでいった。
梨央をあの男から助けてやりたい。
家族のために自分を犠牲にして一生懸命踏ん張っている梨央を…。
俺はこの時、初めて以前からモヤモヤとする自分の本当の気持ちに気がついた。
柄にもなく一人の女の誕生日にケーキを買ってしまった訳を……。
目の前の一回りも離れた女を無性に構いたくなる訳を……。
隣で嬉しそうにコンビにて買ってきたケーキを受け取り、俺が夜食でとっておいたカップラーメンを「美味しい」と無邪気にすする姿に俺は意味もなく癒された。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
出会った頃から不思議な魅力をもっていた梨央。
単なる被疑者なんかじゃない。
ましてや妹という単純な存在なんかでもない。
俺は確かにこの時、自分でも信じられない気持ちに驚き、そして不思議なまでの胸の高揚感を感じていた。