愛情の鎖
まるで西田の思うツボだな…
そう苦笑いを浮かべそうになったが、まだ芽生えたばかりのこの気持ちを素直に表すわけにはいかない。
あの男を捕まえるまでは。俺の任務を全うするまでは。
俺は梨央にとって口の悪い隣人のおっさん。
ただの愛想のないコウさんでいなきゃいけない……
……だが、そんな俺の決意もこの先じわじわと崩れていくことになる。
俺の決断はそう簡単なものじゃなかった。
梨央の笑顔を見るたび、お節介な優しさに触れるたび、俺の心は自分でも信じられないほど加速する。
彼女の美声を聞くたびに、俺は彼女をこの腕の中に納めたいという気持ちが日に日に高まった。
たかがたった一人の小娘。
されど俺にとって人生を覆すような特別な存在。
俺はこの日、この先に待ち受ける苦難と葛藤の日々をまだ本当の意味で分かっていなかった。