愛情の鎖

「まぁ、あくまで今まで言ったことは全部俺の意見だけどな」そう言ったコウさんは何故か全てを見通した感じの表情をしていた。

少し眠そうに、だけど届いた言葉はしっかりとしたもので私は不覚にもなるほど、と真剣に彼を見つめてしまう。


「あの」

「わりぃ、もう限界…」


だけどそれっきりもうこの話は終わりと言わんばかりにコウさんは目を閉じてしまった。

妙な余韻を残したまま、そのまま1分も経たないうちにスースーと寝息をたてて寝てしまったのだ。


うわっ、早っ!
よっぽど疲れてたのかな?

そんなコウさんの姿を見てさすがの私もビックリしたけれど…、

でも、最近すごく忙しそうだもんね。しかも私の為に毎日頑張ってくれている。そう思うとさすがのコウさんもお疲れかもしれない。

本当はもう少し今の台詞の意味をちゃんと聞いてみたかった気もするんだけど。

そう苦笑いしつつ、そうなると私も次第に眠気が襲ってくる。


『梨央、世の中は金だ』


昔宗一郎さんに言われた事を打ち消すように再びコウさんに抱きついた。

例えそうだとしても宗一郎さんみたいな生き方だけはしたくない。

私は私の思った道を進めばいい。

コウさんの言ってくれた事を信じるもん。


…ね?そうだよねコウさん。

そう問いかけるように私もそっと目を閉じた。
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