愛情の鎖
何だか香ばしいかおりがする。これはコーヒー?
そして誰かの話し声も…
遠くから聞こえるざわざわと嫌な雑音を意識の片隅に感じた私はゆっくりと重たい瞼を開けた。
「…ん……」
「おや、やっとお目覚めのようですね」
ぼやけた視界に映るもの。それは…遠藤、さん?
以前宗一郎さんのマンションでよく挨拶を交わしていたコンシェルジュの遠藤さんだった。
「えっ……」
どうして遠藤さんが?
遠藤さんの隣にはサングラスをかけたあからさまな強面のお兄さんもいて、
やたらぼんやりととした頭で私は考える。それにやけに体が重たくしびれ、体が思うように動かない。
「あの……」
「少々睡眠薬の効き目が強かったようですかね」
コーヒーカップをソーサーに戻した遠藤さんが何故か涼しそうな顔でそう言った。
不信に思った私は慌てて起き上がろうとしたけれど、
「…なっ……」
よく見たら私の体は本当に動かないのだ。いや、正確には動かせないと言った方がいいのかもしれない。
「なによこれっ!」
私の手首は後ろ手にロープでぐるぐる巻きに固定されており、片足も同じようなロープで繋がれていた。