愛情の鎖

「まだ、死にたくない……」

「でしょうね。でも人の運命なんて何処でどうなるか誰にも分からないことです。別にあなたが今此処で死ぬとも限らないし、どちらにせよあなたの人生がどう転ぶかはその時の運命に任しましょう」

「………」


どうすることも出来ず、ただ傷心しきったように呟いた私に何故か遠藤さんは何でもないかのようにサラリと言った。
他人事だと思って偉そうに。何て軽薄なのだろう…

遠藤さんってこんな人だったんだ。やっぱりいつも見てたあの柔らかな笑顔は嘘っぱちだったのだと思い知る。



「…くやし……」


その瞬間ふと彼の顔が浮かんだ。無性にコウさんに会いたいと思った。
いつもぶっきらぼうのあの優しさが何より一番信用できる。
あんなに口が悪くて態度もふてぶてしいのにね。私にとってそんな彼の不器用な優しさが今は愛しくてたまらない。

そう思った矢先、突然目の前のドアががチャリーー、何の前触れもなく開いた。


「なんだ、ずいぶんと楽しそうだな」


その低い声、感情のこもらない冷血な眼差しが突然私の視界に飛び込んでくる。


「久しぶりだな梨央」

「………」


直後回りの空気がガラリと重たいものに変わる。

まるで地を這うような言葉遣い、殺気さえ感じる立ち振舞いに恐怖で思わず声を詰まらせる。
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