愛情の鎖
あくまであの時のことはなかったことにするつもりなのか、宗一郎さんの顔が不適に歪む。
「もちろん俺の所に帰ってきてくれるんだろう?あんな得たいの知れない男より、俺の方が断然梨央にふさわしいに決まってる。もう一度やり直そう」
この人の考えてることが分からない。
感情のこもらない瞳で真っ直ぐ見つめられると、その思いはさらに強く増した。
冗談じゃない。
あんな酷いことをしておいてどうしてそんなことが易々と言えるのか、恐怖と比例して怒りさえも沸いてくる。
「梨央……」
「やっ!」
宗一郎さんの唇が近付いてきて咄嗟に顔を反らしてしまった。
こんな人にキスなんてされたくない。
もう二度と、少しだって触れられるなんて耐えられない。
「お願い、私を解放し……」
「…ちっ……」
僅かだけど、宗一郎さんの顔色が変わった。
抵抗する私を見て瞳の奥がよりいっそう冷たさを増していくようで、
「ずいぶん反抗的な態度をとるようになったじゃないか」
「…もう、あなたの言いなりにはなりたくないのっ」
例え今此処で殺される運命だったとしても、私はもうコウさん以外の人に触れられるのなんて絶対に嫌だ。