愛情の鎖

そんな激情に私はたまらずコウさんの名を呼んだ。

涙でぐじょぐじょ、最後の方はちゃんと声にならなかったけれど、それでも私はコウさんの方を真っ直ぐ見つめた。

その瞬間ほんの一瞬、優しく目を細めたコウさんと視線が混じりあったのだけど、それはパァン!、と破裂するような音と共に勢い良くあっという間に引き裂かれた。



「ーーー」


それは非情にも銃声が飛び散った音。

まさに鉄の杭を壁に打ち込むような、瞬間的な激しい響きだった。



「ちっ、外したか……」


思わず息をのむ。

幸いなことにそれは誰に当たることなく壁に打ち込まれていた。

間一髪コウさんの頬を掠めただろう銃弾は、目の前の宗一郎さんがコウさんに目掛けて撃ち放ったもの。


「…っ……」


そんな緊迫感につーっと、額に冷たい汗がこぼれ落ちる。

顔から血の気が引いていく。

これが澤田宗一郎、彼の本当の姿なんだ。

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