愛情の鎖

嬉しいような、切ないような。

ちゃんと割り切ったはずなのに、心から祝福するのは難しい。慎ちゃんには幸せになってほしい。

そう思うのに、心の何処かではまだ吹っ切れていない自分がいるのを改めて感じた。


私って案外未練がましいのかも?

複雑な思いのまま、持ってきた缶ビールをグビッと喉の中に流し込もうとすると、いつものタイミングパターンでぶっきらぼうな声が聞こえた。


「なんだ。浮かない顔して旦那と喧嘩でもしたか?」


そんな問いかけに、私は声がした方に顔を向ける。


「よお、今日も飲んだくれてんのか」


いつの間に来たのだろう…

浅い柵を挟み、隣のベンチにいつものように腰を下ろしたコウさんとバチっと目があってしまった。


「覇気がないないぞ、覇気が」

「別に…、てか、今傷心中なのよ」


持っていたビールをコウさんに見せびらかすようにヒラヒラさせると、彼はわけが分からないというように顔を傾けた。


「初恋の人が来月結婚するんだって」

「なんだそりゃ」

「急に切なくなっちゃって……」


落胆するように呟く。

コウさんには悪いが、今は切なく終わった初恋に一人でしんみりと干渉したい気分なのだ。


「だから今は話しかけないで」


せめて今日だけ思い出にふけっても罰は当たらないよね?

そんな思いでコウさんに目を向けると、彼は胸元のポケットから煙草を一本取り出した。
そしてさもどうでもいいかのように、ふぅと、呆れたように煙を吐いた。


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