愛情の鎖

「くだらねー」

「言うと思った」


気だるそうに煙を吐き出したコウさんに、私はプイッと顔を背ける。


「人の妻が何言ってんだか」

「人妻だって過去ぐらいあるもん」


結婚してるからって、昔の恋に懐かしんじゃいけないことはないと思う。

自分が決めた人生だけど、こんな形に縛り付けられたら嫌でも昔の楽しかった記憶を思い出したくもなるんだもん。


「旦那が泣くぞ」

「だって本当に好きだったんだもん」

「あっそ」

「じゃあ聞くけど、コウさんは昔の恋人のことを思い出すことはないの?」

「ない」


キッパリと言い切ったコウさんに思わず言葉が止まる。

まぁ、なんとなく予想はついていたことなんだけど…


「俺は去る者は追わない主義なんだよ」

「サイテー、だからその年になっても結婚できないんじゃないの?」


そりゃあ、男と女では価値観が違うと思う。

だけどコウさんは見た目からして女の人を優しくしてるっていうイメージがない。

ていうか、どうみてもしてなさそうだから、余計クールなイメージが定着してしまうのかもしれない。

< 42 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop