愛情の鎖

「あ、あの、つかぬことをお聞きしますが、それが今の…、えっと、遠藤さんの本当の姿なんですか?」

「…ん?ああ、そう。これが本当の俺。本名は松本敦士(まつもとあつし)今まで梨央ちゃんと接していたキャラは全部演技だったってこと」

「へ〜…そうなんですか…」と思わず納得する声がもれる。

ていうのは嘘。本当は全然納得できてない。

だってあの遠藤さんだよ。あの紳士な態度はどこへやら、どうみてもキャラが違いすぎるんだもん。

たとえそれが演技だったとしても、正直信じられない気持ちでいっぱいだ。


あ、でも、



「だからあの時……」


ふと何ヵ月ぐらい前だったっけ?マンションのエントランスでコウさんと遠藤さ…、いや松本さん。3人で鉢合わせした時のことを思い出した。

その時に貰ったハーブティーの中に頼んでもない風邪薬が入っていたこと。

そしてコウさんが松本さん(遠藤さん)に対してどうしてあんなに冷たい態度をとってたのかもやっと今なら理解ができる。


「皆さんグルだったんですねぇ…」

「ごめんね梨央ちゃん。騙すつもりはなかったんだけど、こればっかりはどうしようもなくて」

助手席の松本さんを庇うように、唯さんがペコリと頭を下げる。


「いや〜…本当にごめん。でもさ、正直納得した。さすが晃一が選んだ子だけあるなって。あの時、あの澤田宗一郎にあれだけガツンと楯突けるなんてそうそういない。
死を前にしてスゲー度胸があるなって、晃一が惚れるのも頷けるよ」
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