愛情の鎖
「本当すごい、立派立派」と感心する松本さんの後ろで、やっぱりコウさんは「アホか」というような表情をしている。
そんなやりとりに私は苦笑い。
だけどその時、突然私の手に覆い被さってきたコウさんの手の温もり。
そんな予想外の仕草にドキッとした私はコウさんの次の発言にもっとドキドキさせられることになる。
「当たり前だ」
「えっ…」
「こいつはその辺にいる女とは違う。肝の据わりかたが全然違うんだよ。この俺が振り回されてるぐらいだからな」
添えられた手に力が加わり、ふっと笑いかけられる。
「この俺が見込んだことだけはある」
うわ、何その笑顔?反則だよ。
そしてその甘いフレーズ。しかも皆がいる前で堂々と。
不覚にも心臓が破裂してしまいそうで、体に悪影響を及ぼしそう。
「ふっ、顔真っ赤だぞ」
「なっ、コウさんが変なこと言うからでしょ?」
「俺は変なことは言ってない。事実を言ったまでだ」
「またそう言うことを…っ!これだからおじさんは!もうちょっと場の雰囲気を考えてよね!」
信じられない!とはずかし紛れにコウさんを睨み付けると運転席からぷっ…と笑う声が聞こえた。
それは紛れもなく松本さんの声で、ハッとした私はコウさんから視線をそらす。