愛情の鎖
でもそっかー
よく考えたら唯さんも名字が松本だったもんね。
今更ながらにそのことに気付く。
それに今まであのマンションに来ていたのももしかしたら、エントランスに松本さんがコンシェルジュとして居たからなのかもしれないし。
思わず隣のコウさんを見ればいたって普通。もう当たり前の光景なのか、とくに何のリアクションもしていなかった。
なるほどねー、松本さんと唯さんが。
ここのところ驚くことが多過ぎて、正直頭がついていかない。
ここ数ヶ月でどっと色んなことがあったもんねぇ。
そんな衝撃的な事実に翻弄されながらも、「そっかそっか」と頷いたのもつかの間、それから警察署に着いた私はコウさんとは一旦別れ、別の刑事さんにバトンタッチされて取調室に向かった。
初めて入る空間。
それは刑事ドラマとかで見たことのある雰囲気とはやっぱり違い生々しく、最初こそど緊張。
ドキドキしたものの、私の斜め向かいには西田さん。担当の年配の刑事さんも思いの外優しく、とてもリラックスできた。
そして長い取り調べが終わり、廊下に出ると西田さんが「おつかれさん」そう言って缶ジュースを手渡してくれた。
その姿はいつもみたいに優しく、なつっこい雰囲気でホッと安心感が顔を出す。
「ありがとうございます」
それを受け取った私もニコリと笑い、私達はそのまま休憩所に向かい、備え付けられている長椅子に腰を下ろした。