愛情の鎖

「大丈夫か?けっこう疲れただろ。長い間付き合わせて悪かったな」

「いえ、そんな、大丈夫です。最初は凄く緊張したけど、ほら、担当の刑事さんも優しかったですし」


そう言って笑えばコウさんも安心した表情に変わる。

よかった。見た目よりそんなに怒ってないみたい。ホッと胸を撫で下ろす。

だけど、気付いてしまった。「ならいいが」と言ったコウさんの横顔を見ると、いつもよりお疲れ気味の哀愁が漂っていることに。


「あの、コウさんも大丈夫?」


だから言ってしまった。

気付いたらコウさんのおでこに私はそっと手のひらを重ねていた。


「いつもより顔色悪いよ。コウさんの方こそ疲れてるんじゃない?平気?」


これは絶対疲れてるよね。

だって朝から拉致された私を探して、そしてあの宗一郎さんとの襲撃だもん。
いくら元気でタフなコウさんだって疲れちゃうよ。平気な訳がない。


「あんまり無理しないでね」


正直私が言えた義理じゃないけれど、でも、でもさ。

これが今の私の正直な気持ちだから。
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