愛情の鎖
そしてどちらとともなく見つめ合った。
2人の間に優しく、しとやかな空気が包み込むと、心までポカポカと温かいものに包まれるから不思議。
「……あの、いい雰囲気のところ邪魔しちゃってスミマセン。えっと、コーヒーを…」
その声にハッとした。
そうだった。西田さんの存在をすっかり忘れてた。
それはコウさんも同じだったようで、一瞬怪訝そうな顔をしたコウさんが軽く舌打ちをし、目の前にいる西田さんに低い声を飛ばす。
「西田、悪いが俺はこのまま一旦外に出る。梨央を送ったらまたこっちに戻るから、それまでに俺の分の報告書も全部やっておけ」
「えっ!まじっすか!?」
「当たり前だ。先輩の仕事をサポートするのは後輩の務めだろ。つーかやれ」
「そんなっ、でも、俺もこれからまだやらなきゃいけないことが山のように…」
「あ?」
「いや、そのっ…」
「人の女口説いてる暇があるならそれぐらい余裕だろ。なぁ西田君よ?」
つっ!
容赦なく突っ込まれ、西田さんの表情が青ざめていく。
うわ、完全に怯えてる。ていうか見ているこっちが可哀想。
でもこれは西田さんの自業自得?ちょっとやり過ぎなような気がするけど、ここは冷静に。
ごめんね、西田さん。
私はあえて何も言わず、心の中でただ「ファイト」とエールを送った。