愛情の鎖

警察署を出ると、私はコウさんに誘導されるままに車に乗り込んだ。

初めて見る車は黒色の真新しいセダンで高級感があり、これはコウさんの所有しているものらしい。

じゃあ今まで乗っていたのは?と聞くと、警察署の方で用意していたものなんだって。

本当用意周到、そして先程取調室で聞いた事実を思い出した私はコウさん本人にも直接問いただすことにしたのだけど、


「聞きましたよ。コウさん達は最初から宗一郎さんをマークしてたんですね」


私は運転するコウさんの横顔を見た。

さっき私が聞いたこと。

だからあのマンションにやってきた。

突然私の前にコウさんは現れたのだ。


「ああ、そうだ。あのマンションを借りて梨央達の隣に引っ越したのも全部澤田の野郎を逮捕するためだ」


コウさんは顔色一つ変えなかった。

ただ前方を見つめ、私に真実を打ち明けてくれる。


「じゃあ…、私に近づいたのも全部……」

「そうなるな」


やっぱりコウさんは顔色一つ変えなかった。

私はというと、そんなコウさんの毅然とした態度にチクリ、針を刺されたような痛みを覚えてしまう。
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