愛情の鎖

「梨央…」

「…っ……!」


なのに……、そんな私の予想とは正反対の態度。

彼はやっぱり前を向いたまま、だけど膝の上の私の手を握りしめ、彼らしくないとても優しい言葉をくれた。



「泣きたいなら泣けばいい」

「えっ…」

「この3年間泣きたくても泣けなかったんだろ?ずっと一人で我慢してたんだろ?だったら我慢することない、思いっきり泣けよ」

「…つっ……」


ついに視界までぼやけて見えなくなった。

俯いた私はたまらず体を震わせる。



ズルいなぁ。

コウさんのいつになく優しい言葉に私の涙腺は本当に壊れてしまう。

握られたコウさんの手が温かい。

優しくて温かくて、全身がポカポカと守られてるみたいにホッとする。


「…っ、コウさんが優しすぎて、怖い、ですっ」

「あ?俺はいつだって優しいだろうが」


そんな会話に安堵の笑みがこぼれ落ちる。

不思議だね。

まさかこんな風にもう一度穏やかに笑える日が来るなんて思わなかった。

こんなにも穏やかな気持ちを取り戻せるなんて…、


ありがとう、コウさん。

これも全部コウさんのおかげだよ。
< 434 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop